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FLIP CHINO

ファッションとは違う何かの目的の為に作られた『道具』。考えに考えつくされたからこそ、『物』として愛され 価値のあるものとして今も残っています。

そういったものからの恩恵を受けて、僕らは物つくりをしているのですが、いくら当時の物つくりに近づけても
いくら過去を紐解いて作ったとしても、やはりそれではオリジナルなモノは作れないのです。

TATAMIZEはオリジナルなものが作りたいと思っています。

奇をてらったものじゃなく、ただの普通でもなく

タグが無くても、そこの服だと分るモノ。そして、着る人が気に入れて 楽しめるもの。

そこに対して自らが考えられるために、僕は自分の手でモノつくりをしてきました。


TATAMIZEは道具を作るブランドじゃありません。ごく普通の日常で着る服を作っています。

TATAMIZEはシーズンごとに 新しい洋服の提案もしています。ですが、同じものを何度でも提案したいと思っています。 

『提案が新鮮じゃなくなる。新鮮じゃなくなるから売れなくなる だから新しいものを作る。売れそうなものを作る』

洋服はそんな簡単なものじゃないと思うのです。そんな考えで作っていない。

小さなブランドですが、大きさの問題じゃないと思っています。 どこかの何かと比べられるものではなく、ただTATAMIZEらしいものを作っていきたい、出来る事なら 遺したいと思っています。



TATAMIZE デザイナー八重畑

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完成されたわけでは、けしてありませんが

TATAMIZEが毎シーズン提案している商品を5型ご紹介いたします。


まずは、FLIP CHINOから。

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TATAMIZEらしさ というものが何なのかは、正直僕も言葉で『これ』とは説明できません。

ですが一つ言えることは、「モノとしての拘り」 といった時に、自分自身が作り手だからこそ思いつけるアイディアを大切にしていきたいと思っていて それが「らしさ」に結びつくことを大切にしています。それが僕の拘りです。


あくまで、洋服として魅力的であることが一番。その上で、生地が洋服になるまでの過程の中から 新たなデザインを創りだす。そうすることで、一つ一つのディティールに しっかりと意味を待たせられる。
そういった商品は、単純に良いと言えるものだと信じています。

そうやってできた商品が、TATAMIZEらしいと言われるものであれば最高です。




FLIP CHINOは TATAMIZEの定番商品です。

細すぎない、ややテーパードするライン。ワークパンツのようでパターンは曲線的。飽きのこない 定番的シルエットのパンツ。



TATAMIZEが工場生産に移行する際、真っ先に作ったのはFLIP CHINOでした。

それまでTATAMIZEは僕が すべての生産を行っていました。世の中にあるTATAMIZEはすべて僕が作ったものでした。それを6年続けてきた。そのやり方以外 まったくイメージできなかった。半年以上先に展示会をして、工場へ発注する。

発注したら、いったいそのあと何をしているんだろう? 営業ってなんだ? 何より 僕以外の人たちがTATAMIZEを作ることがまったく想像できませんでした。 だから、正直工場での生産を ギリギリまで決められなかった。 

でも、僕の手だけではもう生産は追いつかなくなっていました。納品までの時間が それまで通りには行かなくなり、オーダー分の生産と、新作の生産のバランスが取れなくなっていました。 


工場生産に移行する。

それは、TATAMIZEの生産が僕の手から離れ、ある程度『量産されること』を意味します。

そんな当たり前のことが、僕にとってはまったく当たり前ではなく、ただ生産を追いつかせる事や 自分の手を休める(実際には全く休まらないけど・・)為だけに 工場生産というものがあるとしたら そこにモノ作りとして今まで以上の意味を見出すことができるのか。

数を作れば、それなりに色々とお金もかかる。いつしかモノ作りが『その為のもの』になってしまわないか。そんな不安もありました。



でも、それでも工場生産を決心したのは 「製品」という言葉でした。 それまで自分の作ったものを製品とは思っていなかった。作品などとも思っておらず、はっきり言って 自分が作ったという以外 何も考えもしなかった。

製品というものは その時点での完成品です。

そう、つまりTATAMIZEが作れる物で 何か製品として世の中に遺しておきたいもの。

ファッションのサイクルや速さは関係なく、『作り続けて』いきたいものの製品を作りたい。

そう思えたことで、工場生産へ移行する決心がつきました。


FLIP CHINOは、非常にTATAMIZEらしいパンツです。モノ作りから生まれた どこにもないパンツだと思っています。

このパンツを 僕はずっと作り続けていきたいし、少しずつ変えながら 遺していきたいと思っています。


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FLIP CHINO

もともとはジャケットのポケットだったのですが、ハンティングジャケットの『フラップがポケットにもなっているディティール』が ずっと頭の中にあり、ひとつに見えて2つのポケットの機能があるポケット というアイディアが形になったのがこのポケット。

『箱口ポケット』と呼ばれる ジャケットの胸ポケットなんかに使われるポケットを フラップ型に変えて、貼り付けポケットのフラップと 袋のポケットの入り口を兼ねる。

そのアイディアを思いついた時の事は 今もはっきりと覚えています。でも、それよりもこのポケットの角度とバランスを描けたことがこのパンツにとっては 何よりも大きなものだったと思います。


デザインする上で『ポケット』というのはまず先に頭に浮かびます。 作りたいもののイメージに合ったポケット。
シャツ以外、ポケットは必要なものですし、そのもののイメージを決定付ます。

特にパンツは、ポケットの形と素材で ジャンルを判断されたりする事もあり、だからこそ『新しい定番のパンツ』というものは生まれにくいのだと思います。

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このポケットを作る上で、絶対に~風を狙ったものにしたくなかった。

フラップというのは、雨ぶたとしての役目の他、中の物が落ちないなど 機能的な反面

ボタン止めされるディティールや、形状など 色々と遊べるものでもあります。 また、身頃から浮いているパーツというのは(特に僕が作るような)洋服にとって重要で、そこに遊びが生まれます。

洗いをかけてよれたり、はねたり そういった表情を狙って形作ることもありますし、どの位置にフラップがあるのかで 全体のバランスが決まる場合もあります。

僕の場合、今のところ パンツではお尻より下にフラップを付ける事をしたことがありません。

やはりパンツは 腿から膝 そして裾にかけてのラインが重要で、それを引き立たせるために お尻あたりにポイントとしてフラップが ポンとおいてある。そのバランスが良いんです。


FLIP CHINOの場合、軍パンでもなくスラックスでもなく言うところの5ポケットでもない。ワークパンツとも違う、チノパンなんですが チノパンとも違う。そうゆうパンツが作りたかった。それでいて、ベーシックなモノ。デザイン デザインしていないもの。すんなり履けるもの。

だから、ポケット それもフラップが重要だったのです。


フラップが斜めに入るのは、ヨーロッパの軍パンでは見かけるディティールです。だから、角のあるもや屋根型のポケットにはしたくなかった。絶対に軍パンっぽくなるから。

横長で 角の丸いフラップ。これならどのイメージにもない形だし、パンツのフラップとして新鮮だ。
しかも、ポケットに手を入れた時に ポケットに沿うようにゆるくカーブした様も良い。

そして、そのフラップに見合う、下のパッチポケットを決めていきました。
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フラップが斜めなので、下のポケット口も斜めにしなくては意味がない。

斜めのポケット口から どう下に広げていくのか? それが問題です。

絶対にないのは四角。バランスが悪い。 五角形もフラップのイメージに合わない。 その時点で『角のない丸いもの』に決まったようなものですが、丸く角のないものの方が『これ』という形を決めるのは 自由すぎて実は難しい。

FLIP CHINOのパッチポケットは、端側はフラップのラインと並行に 斜め下に降りていき、一気にきつめのカーブを描く(ここをアイロンで折るのが 非常に難しい・・)そこからまっすぐ横に行って ゆっくりと大きなカーブを描きながら ポケット口に帰ってくる。

端側がまっすぐ下に降りると 視覚的に内側に降りているように見えてしまうし 大きなカーブの分量が これより大きすぎても 小さすぎても、フラップとのバランスが悪い。

そしてなにより、それが自然かどうかが重要だと思うのです。いろいろ考えても 違和感のあるものではダメ。

何気なく 当たり前のように作られていて どこか気に入れるもの。

定規を使うと、まずこうゆう形は思ったように作れないんです だから何度も手で書いて最後に定規でキレイに仕上げたパターンを使ってサンプルを作り、作り直し・・その当時狭い6畳の部屋で それを何度も繰り返したことを 今も覚えています。




最後のポイントとしては、フラップの両端を3角のステッチで補強していること。 当然 閂やリベットなどで補強したほうが強度は増しますが、それではダメです。

なんというか 趣がない。角のないポケットに 三角のステッチ。このローテクな始末がなんとも良いのです。
なんてことない部分ですが、このパンツの印象として 必ずこの3角のステッチがあるはずです。このステッチじゃなければ、FLIP CHINOではない。 そのくらいの事を思っています・・・。

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ウエストの始末は、スレキを当てて。なんてことのない仕様です。ウエストのカーブに合わせてバイアスに裁っています。

ベルトループの仕様は、上部分はスレキ挟み込み。その後一度カンヌキを入れてから 下部分をカンヌキです。

カンヌキが表に出ると擦れて取れてしまうので(特に上は)このようになっています。

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裏側。
それほど 手の込んだものではないと思いますが、基本的に平ミシンで縫う使用ですので、アイロン工程も多くなります。

工場生産を初めて 何となくわかってきたことなのですが、工場のラインに乗りやすい製品というものがあって、それは自ずと仕上がりの表情にも関係してくる。要するにデニムはこうゆう工場、スラックスはこうゆう工場という具合に。

だから、そこから外れるものは『出来るけど、めんどくさい』みたいなのが 非常に多い。 僕も縫うからある程度その気持ちはわかるけど、でも自分で考えたものだから、得意不得意で作っていたわけではない。

工場というものに対して そこは正直驚きでした。
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後ろ中心。

ここは どうしても巻き縫いにはしたくなかった。パターン的にも、全体のバランスから言っても 両割が良い。

今思えば 巻き縫いでも良い。だけど、やっぱり両割が良いと思う。 その当時は絶対に両割以外考えられなかった。

当初はチェーンステッチとシングルステッチの2重に地縫いしてもらっていた。でも綿100の糸は弱かった。『着用中にステッチが切れた』 と数点直した。 その後もなぜかシングルのみで上がってきて 納品時に僕が全部直したり、「糸をスパン糸へ変更してほしい」といったのに かたくなに綿糸で上がってきたり、でもサイズによってはポリだったり・・・何かと こんなところがうまくいかないものなのです。

今現在は、スパン糸のシングルが2本で落ち着いています。

実は、同じ仕様の同じ商品ですが、微妙に違う部分がある。僕が仕様の変更をお願いしたものもありますが、工場が勝手に変えたりもする。それも、何度も生産した商品なのに。

この間は、サイドの地縫いが なぜかチェーンステッチだった。多分 ミシンの配置とかミシンの空き状況 とにかくそっちサイドの都合だろうと思うけど、まぁ こうゆうイレギュラーなら むしろ歓迎だけどなぁ と思ってしまいました・・。



バックポケットの ボタン裏はフェルトで補強。

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バックポケットは、四角くサイドにマチの付く仕様。

これも フロントと同じで、~風のイメージがないもので 見合うものを。

玉ブチとか、ベイカーみたいにフラップとか フロントと同じイメージで丸みのある・・・など 色々と頭をよぎるのですが、全部全くダメ。

FLIP CHINOはフロントポケットのイメージが前に出ていますが、バックのポケットがこれなのも 大事なポイントです。

僕がいつも書いているように、洋服って真正面からだけ見ている(見られている)ものじゃないんです。横から見たり、後ろから 斜めからみたり、だから前と後ろがチグハグなものはダメなんです。狙いすぎたり、後ろが簡単に考えすぎていたりしてはダメ。

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股部分のマチ。
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TATAMIZEのパンツの裾は ロック処理で納品されます。

パンツの丈は重要ですから、人それぞれ違うのです。 よく聞かれる タタキ幅ですが、僕の場合5センチ縫い代の5ミリ~8ミリくらい折って 4.5センチくらいの縫い代を作って叩くか、4.5の縫い代で 同様に4センチ位の縫い代で叩くか 

僕は 裾を1回くらいしかおらないので タタキ幅の半分か 幅分を折って履く感じ。 クルクルっとロールアップされる方は もう少し細く上げても良いでしょうね。




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↑は 僕の私物。納品されてすぐ自分で履いたもので2年ちょっと履いています。もう、新しいのに変えるのですが・・。

着込んだ生地はやっぱり特別なんです。時には加工も良いですけど、やっぱりね 味を出そうとするわけじゃなく、普通に気に入って着ていて出た味って 全然違うんです。

生地って 当然糸から出来ていて、長い糸を撚ったり 短い糸を撚ったり 織り方も色々。

着ていると「糸」なので、少し毛羽立ってくる。もっと着ていると その毛羽立ちが無くなって、その素材の色が出てくる。

そこから着る人のものになってきて、買ったとき以上の価値が出てくるんじゃないかなぁ と思うわけです。
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愛着がわくものでありたいし、でもモノとして限界が来た時に 同じものがなかったら悲しい。

だから できる限りいつでも新しく買い足せる物を作りたいのです。ただ同じものをたくさん作るのではなく、それくらい愛されるものを作りたい。

先日、展示会に来ていただいたバイヤー様から 『うちのお客さんで フリップチノ カーキだけで3本目の人がいますよ!』って言われて 嬉しかったなぁ。

諦めずモノ作りしてて良かったな と思う瞬間でした。

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ちなみに、「チノ」以外の素材もございます。

左の硫化染めヘリンボーンと 右のコーデュロイ。

FLIP CHINOで、僕はあまり遊んだ素材はやりたくなくて、絶対に損しない素材でやりたいんです。

だから、色だったり素材替えだったりも 昔からあったような物が良い。

特に、今季のコーデュロイは最高です。 色も(画像で見るよりもっと渋い色)良い。コーデュロイとして これ以上でもこれ以下でもない 最高のコーデュロイです。

ちなみにFLIP CHINO のナットボタンは、洗濯を重ねると 徐々に色が落ちてきます(気がつかないくらいのスピードで)。

このコーデュロイで このブラウンのボタンが色あせて濃淡が出てきた具合が 完璧に良いと思うのです。

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↑ちなみに 僕私物の ヘリンボーン。こちらも 毛羽立ちが取れて 色が出てきました。
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こちら は工場生産のFLIP CHINOが出来て 初めて書いたブログ。当時の僕の意気込みが(お恥ずかしいのですが・・)書かれています。



さて、ここからは着用例。
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長々とお付き合い頂きありがとうございました。

もっと書きたいことはもちろんあります。でも、僕が作ったモノですが、その先は僕のものじゃないので、そこからは手にした人が楽しんでいただけたらと思っています。

TATAMIZE
by tatamize66 | 2012-09-18 16:31
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